つないだ手。
ただ黙って冷めた目で
店長を見つめた。

…胸ぐら掴まれながら。



「てめぇ。

簡単に店辞めれると
思ってんのか!?」

「口ついてないんか!?
だんまりか!?あっ!?」

店長がキレればキレる程、
馬鹿らしくなった。

つなぎ止めたいなら
優しくしないと。
管理するならちゃんと
最後までしてみなよ。






私は黙って店長を
見つめ続けた。









ガンッ



店長は私を離し
私はよろけて壁に当たった。


「お前…イブに他の男と
過ごすって…ひどくね?
俺はお前の何?」

店長が優しい声で聞いた。

突然の声変わり?

気持ちわるっ


もうこんな男の嘘に
付き合うのなんて嫌だ。





「あんたはただの金ヅル。
太客回してくれるから
付き合ってるフリしただけ。
勘違いしないで。
あんたの事なんか
1ミリも好きじゃない。」










多分嘘だった。

いや、完全に強がった。

だってきっと多少は
店長が好きだったから。

嘘ばっかの恋愛だったけど
でも店長が居たから
頑張ってたのは確か。


だけど……

だから悔しい。


店を辞めるなら終わり

なんて。

最後まで嘘つくくらいの
優しさ見せて欲しかった。

まぁ、金ヅルの私になんか
そんな小さな優しさすら
もったいないのかな。

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