つないだ手。
私もタバコに火をつけた。

しばらくお互い
黙ったまま。


私はヒロくんが何か
言ってくれるのを待っていた。


でも待っても待っても
ヒロくんが口を開くことはなく

ヒロくんは黙って携帯を
いじっていた。


「……何してるの?」

私が沈黙に耐えられず
口を開いた。

「アプリ」

ヒロくんは携帯から
目を離す事無く言った。

なんでよ。

私居るのにアプリするなら
私居る必要ないじゃん。


「私帰る。」

私はカバンを持って走って
ヒロくんの部屋を出た。

お母さんとお父さんに
一応お邪魔しましたと言って
玄関でブーツをはく。


どうしよう。

涙が出るよ。

こんな事で泣くなんて
あたしは馬鹿なの?

あたしらしくない…

泣かない…

泣きたくない…


手が震えて
チャックが締められない…

早く帰らなきゃっ

早く…

早く…
< 58 / 256 >

この作品をシェア

pagetop