担任は優しい旦那様
あ、やっぱり
また固まっちゃった。

「先生!!」

恋に揺すられて
戻って来た。

『何となく、
反応は分かってました』

これが
普通の人の反応だよね……

しかも、左京先生は
私たちと歳が近い方だし。

「旦那さんとは
何処で知り合ったんだい?」

次に来るであろう
質問は予想に反さず
その通りだ。

『高校時代の担任ですよ』

旦那さんことマー君は
今も母校であり
私たちの出会った
あの場所で
教師を続けている。

「…………」

今度は
固まらなかったけど
黙ってしまった。

此処で口を開いたのは
すっかり空気と
なりつつあった
理香だった。

因みに、琴羽と陽菜子は
マイペースに何を歌うか
二人で曲選びをしている。

「私たちも、
初め訊いた時
ビックリしました」

理香は少し大袈裟な
ジェスチャーをした。

「けど、今日は
恋との今後の
デートプランを
決めるのに
先生にわざわざ
来てもらったんですよ?」

そう、同じような
体験をした私なら
何かいい案が
浮かぶかもと
こうして呼ばれたわけだ。

『そこで、
二人のことを
旦那さんに話して
いいか訊くために
来てもらいました。』

同じ教師としても
いい相談相手に
なると私は思う。

『なんなら、一度
会ってみますか?』

敢えて、
家の旦那さんに
とは言わなかった。

「華蓮、
迷惑じゃない?」

今まで黙っていた
恋が焦ったように言った。

『全然迷惑じゃないよ』

だって友達だもん。

『何だったら、
この後皆で家来る?』

そんな提案をしてみた。

「それこそ、迷惑じゃ……」

基本的にうちは
事前に連れて行く人を
メールで知らせておけば
大丈夫だったりする。

これは、二人のルールだ。

『前以て、
何人連れてくか
言っておけば大丈夫だよ』

今の時刻は午後四時半。

まだ学校に居る時間だ。

『どうします?』

左京先生に訊く。

「……お邪魔させて下さい」

私はマー君に
メールするために
バッグから
携帯を取出した。

《お仕事お疲れ様、
今日ね友達と
友達の彼氏を
連れて行くから宜しくね
人数は五人だよ
また後でね》

送信。

これでよし。

私も歌おうっと。

陽菜子に貸してと
言いながら
近付いて行った。

カラオケ屋さんを
出たのはそれから
二時間半してからだった。
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