JAST BECAUSE…
JUST BECAUSE
私が実(ミノル)と出会ったのは夕暮れ間近の冬の午後。
特に代わり映えのしない日常の中のほんの一瞬の出来事だった。
普段なら気付かずにいるか、視線を向けても通り過ぎてしまうであろうその光景に、その日の私は思わず立ち止まり、声を掛けていた。
「どうしたんですか?」
路にうずくまっていたその男性は、声を掛けた私の方を振り返り、仰ぎ見て言った。
「子犬が挽かれたんだ」
男性がそう言って視線を落とした先を、私は彼の肩越しに覗き見た。
車に撥ねられたのか、子犬は血を流しながら小さく浅い呼吸を繰り返している。
「車に挽かれたところ、見ていたんですか」
「いや、俺が来たときは既に挽かれていて、道路の真ん中でキャンキャン鳴いていたんだ。そのままじゃあまた車に挽かれるから、取りあえずここまで運んで来たんだ」
その男性は今にも泣き出しそうな顔をして、大きな手で優しく子犬を撫でた。
「雑種かな」
「多分。心ない飼い主が捨てたペットが外で子供を産んだんだろう」
男性は子犬を撫でていた手を止めて小さく呟いた。
「……死んだみたいだ」
特に代わり映えのしない日常の中のほんの一瞬の出来事だった。
普段なら気付かずにいるか、視線を向けても通り過ぎてしまうであろうその光景に、その日の私は思わず立ち止まり、声を掛けていた。
「どうしたんですか?」
路にうずくまっていたその男性は、声を掛けた私の方を振り返り、仰ぎ見て言った。
「子犬が挽かれたんだ」
男性がそう言って視線を落とした先を、私は彼の肩越しに覗き見た。
車に撥ねられたのか、子犬は血を流しながら小さく浅い呼吸を繰り返している。
「車に挽かれたところ、見ていたんですか」
「いや、俺が来たときは既に挽かれていて、道路の真ん中でキャンキャン鳴いていたんだ。そのままじゃあまた車に挽かれるから、取りあえずここまで運んで来たんだ」
その男性は今にも泣き出しそうな顔をして、大きな手で優しく子犬を撫でた。
「雑種かな」
「多分。心ない飼い主が捨てたペットが外で子供を産んだんだろう」
男性は子犬を撫でていた手を止めて小さく呟いた。
「……死んだみたいだ」