モノクロ
地下へ続く螺旋階段を降りれば、見えたのは大きな鏡だけが鎮座する広い部屋。
透夜の背中を追いながら部屋の真ん中にたどり着けば、鏡を見ろと促される。
「――――ッ!!? や……っ!」
大きな鏡。そこには。
「これが、今の鹿島の状態。」
まるで色が抜けたみたいに、ほとんど無彩色で形作られた私の姿。
目も鼻も口も、みんなみんな私だけが灰がかっていて、これはまるで、本当に、
「――――白黒、写真…っ、」
やつれた顔でじっと私を見つめる、鏡の中の私。
動作は同じで、背景の色も同じで、ついでに言えば着ている制服のシャツもチェックのスカートも、みんなみんなそのままなのに。
私の身体だけが異彩を放ち、下手な絵みたいに滑稽だ。
「さっき言ったろ。表は輪郭の無い絵画、裏は白黒写真。今の鹿島は裏に色を吸い取られているようなもの。」
愕然と鏡を見つめる私を見て、透夜がゆっくりと話す。
ガタガタと震える脚で、倒れないように必死で立つ私を支えながら。
「猶予は少ない。攻撃をしかけてくる所からして、相手は大分好戦的な性格だろう。」
透夜は険しい表情で呟いた。