【短編】虹の端っこの、キミ。
「――――また、間に合わなかったね…」
俺の前を歩く日和が、空を見上げながらつぶやいた。
俺もそれにつられるように顔を上げた。
結局、俺たちは虹の端っこには辿り着けなかった。
まぁ、そんなのは無理だって分かってる。
日和だって、とっくに知ってる。
だが諦めない。
最後の最後まで笑顔で虹を追いかけるんだ。
そして、虹が薄れて消えてしまったら。
何も残らない空を見上げ、
『残念。また逃げちゃった』
そう言って、少し寂しそうに笑うんだ。
いつだってそうだ。
太陽のような輝く笑顔を少し曇らせて、日和は笑う。
それを見ると、かけてやる言葉が何にも浮かばなくて。
だから代わりに頭を撫でてやる。
そうすると、日和は少し泣きそうになりながら俺の体に擦り寄ってくるんだ。