【短編】虹の端っこの、キミ。
『陽ちゃん…宝物、見つかんないね』
キュッと唇を結び、俺の服を強く握りながら日和は言う。
それを見下ろしながら、いつも聞いてみたいことがある。
『宝物って、何?』
って。
日和は何を求めているのか、俺は知らない。
それは…いいものなんだろうか。
「陽ちゃん?」
日和の声にハッとする。
慌てて視線を戻すと、不思議そうな顔をした日和が俺を見ていた。
ヤベ。
一人の世界に入っちまってた。
「どうしたの?ぼーっとして」
「いや…何もねぇよ」
「ふーん…」
何かいいたげな顔をしながらも、日和はそれ以上何も言わずに、俺の後ろへ回った。
「帰ろっか」
そう言って、日和は俺の腰に腕を回した。