【短編】虹の端っこの、キミ。
夕方の少し涼しくなった風が、辺りを包み込む。
日和を後ろに乗せて、俺はゆっくりと自転車を走らせた。
「陽ちゃん」
「なに」
「先生、怒ってるかな」
「…たぶんな」
「明日、怒られる?」
「朝イチで呼び出しだろ」
「…そっか」
夕陽が俺たち二人の影を伸ばす。
アスファルトに映る影の、俺と日和のほんの少しの距離が、もどかしい。
「…陽ちゃん」
再び日和が俺を呼んだ。
「何だよ」
「陽ちゃんはさ、どうして悲しくないの?」
「は?」
いきなり何だよ。
ちらりと後ろに視線を向けるが、日和は俺の背中に頭を預けていて俯いている。
顔が、見えない。