【短編】虹の端っこの、キミ。
「陽ちゃん、聞いてるの?」
「ハイハイ」
「もうっ!」
ぷくっと頬を膨らませた日和が俺を睨む。
ちっとも怖くねぇ。
…むしろ抱きしめたくなるくらいに、可愛い。
「怒るなって。で、日和。お前何しに来たんだよ」
さりげなくぽんぽんと頭に手を乗せながら、話題を変えると、日和は「あっ!」と大きな声を出した。
ビクッと肩を震わす。
「おい、いきなりでかい声だ…」
「虹!」
爛々と目を輝かせた日和が、俺の言葉を遮る。
ぐいと俺の腕を掴み、日和は空を見上げた。
「あのね!虹が出てるの!」
突拍子のない日和の言動には、いつも振り回される。