はちみつ色
それは、本当に一瞬の出来事で。


男の俺が出る幕もないって位だった。


涼しげに佇む杏の足元に転がった2人の男達の元にゆっくり近付く。


「はいはい、そうやってパンツ見ようってしなーい。さっそと帰れ」


ゲシゲシと転がる男達の脇腹を蹴ると、そいつらは腹や腕を抱えて逃げるように立ち去っていった。


2人だけになった遊歩道に、俺の溜め息が漏れる。


「てか、俺ってダサくね?」


助けようと叫んで、んでもって駆け寄る前に倒されちゃうなんてさ?


首を傾げて杏を見ると、フフフって切れ長の瞳を細めて笑っている。


「あたしの名前、知ってたんだ?」


束ねた髪を解きながら、杏が俺を見上げた。


風になびいた髪から、ジャンプーの涼しげな香りが鼻をかすめる。


「あぁ・・・今日知った」


ドクン・・・と胸が疼いたのを隠すように早口になる俺。


「そっか」


と、笑った表情に・・・再び胸が疼いた。


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