月下の踊り子
彼の顔を見ると途端に胸が高鳴る。
ああ、こんな事でこれから羽鳥さんとどうやって接していけば良いと言うのだ。
マスターキーで牢の扉を開けると、羽鳥さんは中に入ってきて手を私のおでこに宛がった。
触れ合ってる。
何でおでこに手を当てられているのかは知らないけれど触れ合ってる。
ああ、落ち着け私の心臓。出来るだけ意識しないように――。
「顔が赤いぞ。熱も少しある、かな?休むか?」
無理。即決に達した。
その言葉を聞くともうお手上げ状態。
私はこの人が好きだ。でも、やられっぱなしでは割に合わない。
今度はこっちから仕掛けるとしよう。
羽鳥さんが手を離すと同時に彼の胸にぎゅっとしがみ付いた。
ああ、夢心地。このまま眠る事が出来たらどれだけ幸せだろうか。
お返しのつもりが自滅している。
「どうしたんだ」
身体を離すどころか逆に私を抱きしめて、羽鳥さんは訊ねた。