月下の踊り子




「いえ、ちょっといきなりこうしてみたくなったんです」

「子供みたいな奴だな」

「別に私は大人を気取ってるつもりはありませんよ。子供だろうと大人だろうと羽鳥さんが好きな方でいたいです」

「何でお前は……」

「はい」

「朝っぱらからそんな可愛いことを言って私を惑わすんだ」

「は、羽鳥さん。目が狼みたいにになっちゃってます」

「ああ、じゃあ舞歌は差し詰め赤ずきんという所か」

「赤ずきんちゃんは狼に食べられちゃいますね」

「そうだな」

「羽鳥さんも私を食べるつもりですか」

「さぁて、どうだろうな」



そう言いながら羽鳥さんはゆっくりと唇を近付けて来た。


それに受け答える。


もうすぐ他の看守さんが起床の時間を告げに来るかもしれないけれど、そんな事がどうでも良くなってしまうくらい頭が溶けてしまっていた。


唇を離す。


名残惜しいけど他の人に見られたら羽鳥さんが色々と不味いだろう。


禁断の恋。


そんな言葉が頭を過ぎる。


とても危険で甘美な響き。


今の私にぴったりな言葉だと思う。




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