月下の踊り子



それが山口が香川舞歌という人物を知ったきっかけ。


舞歌は猫に餌をあげていた。


あれは囚人に支給された昼食。


自分のをあげているのだろう。


その行動がとても気に掛かった。


山口は香川舞歌の外面だけは少しばかり知っていた。


この監獄の中で四番目に若い囚人。


そして孤児で仕送りも何もなく、この監獄から支給された物のみで生きている事。


つまり舞歌はその猫に自分の昼食を減らして、または抜いて餌をあげていたのだ。


この監獄にいる人間は囚人だけではなく看守までも自分中心な人間が多い。


何の見返りもないのに野良猫に餌をあげる人間がいるなんて思ってもみなかった。



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