月下の踊り子
そして翌日。
山口は昼食の場で舞歌に声を掛けた。
「自分の昼食抜いてまでどうして猫なんかに餌をあげたりしたんだ」と。
舞歌はその質問の意図がまるで分かっていない様子で自分の行動の理由を答えた。
「だって、お腹空いてるみたいでしたから」
山口はその言葉を訊いた時、こんな優しい人間がこの監獄の中にいたのかと感動すら覚えた。
恐らく少女は野良には甘やかして餌をやらない方が良いなんて後先考えてはいなかっただろう。
ただ目の前の腹を空かせた猫を放って置けなかっただけなのだと思う。