月下の踊り子




自分に喝を入れる。


大分、冷え込んできたので背中を丸めながら看守室に戻った。


看守室で惰性のように時間を貪る。


そしていよいよ夜勤の時間が迫ってきた。


私は本日初めて時計を目にした。



「羽鳥~。いるか?」



扉から入ってきたのは山口。


少し早めにやって来た。


残り約一時間で見回りが始まる。


時間はゆっくり、けれど着実に流れていく。


自分は最後の日、舞歌に何をしてやれるのだろう?


そればかりが脳内を巡って仕事が手付かずになっている。




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