月下の踊り子
☆間奏☆
今夜はとても充実した一日だった。
私は何物にも変え難い充足感を胸に抱いたまま床に就いた。
あの看守さんと話をしてみたい。
そう思ったらその願いはなんとたった一日で叶ったのだ。
これも山口さんのおかげ。彼には明日、御礼を言おう。
外の雪はまだ止まない。
窓を眺めるとちらちらと何人もの冬の踊り子が舞っていた。
雪の絨毯へと吸い込まれてゆく踊り子達。
それはとても儚げで、でも寂しくはなく、それどころか私の心を温めてくれた。
だがこの雪も冬が終わるといずれは降らなくなる。
しかし替わりに春には桜の花が満開になる。
だから春は好き。――と言うより四季はそれぞれ違った顔を覗かせてくれる。
だから嫌いな季節はない。
ただ残念な事は夏は目玉である海を見れない事であろうか。
この牢は窓から空が良く見えるので秋の満月はとても綺麗に映る。
ああ、そういえば今は残念ながら曇り空で隠れているから判らないけど今夜も満月だ。
雪も綺麗だが満月も負けないくらいに綺麗。
出来れば同時に見る事が出来れば良いのだけれど。ってそれは少し欲張りすぎか。
でも少しくらいの欲張りは勘弁して欲しい。
何時、終わるか分からない生活。未来への希望はない。
そんな暮らしをしているのだから。