月下の踊り子
「宮沢。最近、お前の囚人に対する仕打ちが上の方で少し問題になっている。この前だって女の囚人の歯を折っただろう」
「ああ、あれですか」
不敵に宮沢は笑う。
動揺した様子もなければ反省の色もない。
別に今に始まった事ではないが宮沢のこういう態度は少々鼻につく。
「あの囚人が俺に悪態をついたから注意しただけですよ。歯を折ってしまったのは不幸な事故です。
それに、看守は囚人にナメられてはならない。そう教えたのは羽鳥さん、貴方じゃないですか」
「ああ、そうだがお前は少しやりすぎだ。今後、過激な行動はなるべく抑えるようにしろ」
「――了解しました。もう戻って良いですか?」
「ああ」
宮沢はそれ以降は何も言わず、部屋を後にした。