月下の踊り子
今日は川で泳ぐ小魚を捕まえようと試行錯誤している。
何度も何度も挑戦するが捕まえる事が出来ない。
白い女はその子供をただ見守るだけ。
しかし子供はそれが女なりの応援の仕方だと知っていた。
魚を捕まえる事なんて二の次。
ただ子供は自分の母親と一緒にいられる時間が何よりも大切のようだった。
子供が川の中に顔を突っ込む。
その瞬間――。子供の視界と私の視界が共有した。
水の中。気ままに泳ぐ魚。
無数に散りばめられた小石。
岩にこびり付いた緑色のコケ。
川の中で屈折される太陽の光。
三つ並んだ大きな岩。斑模様の貝殻。
その視界は――どこかで見た事があるような景色。
それがいつ見た景色なのかが思い出せない。
でも、その水の中の景色はただ心地良かった。