月下の踊り子
空は晴天。見上げる雲は手を伸ばせば届きそうと思わせるくらいに近い。
夢から覚めた私は休憩時間を利用して監獄内の外を散歩をしていた。
こう天気の良い日はのんびりと昼寝でもしたいものだ。
「あ」
「ん?」
「羽鳥さんじゃないですか」
偶然の出会い。
振り返ると舞歌の姿があった。
舞歌は私のもとまで小走りで近付いて行き――お約束の様に転んだ。
「あいたたたたた」
「三半規管に異常でもあるんじゃないか。どうして何もない所で転ぶんだ」
見たところ怪我はないようだ。
目尻にうっすらと涙を溜めている舞歌に手を差し伸べる。
その手を受け取り、舞歌は「えいっ」と掛け声と共に力一杯、私の手を引いた。
不意を突かれ、の力に抵抗出来ずに已むを得ず、地面に膝をついた。
しばらく硬直。自分が何をされたのかが巧く理解できなかった。
ああ、そうか。転ばされたのか。