月下の踊り子
第三章『その手を取って』
覚悟はしていた――。
ここが何処かを考えれば簡単に予想が付くはずだった。
いや、本当は意図的に考えようとしなかっただけ。
誰しも常日頃、別れを想定して人付き合いはしない。
しかしこの場所にいるという事は同じ職の者でない限り、本当の別れだという事。
本日も何ら変わった事のない会議だった。
ただ囚人の一人の刑の執行日が決まっただけ。
その囚人が香川舞歌という事以外は私にとって本当に何ら変哲もない会議であった。
話が全て終わり、会議室の片隅で一人、机に肘を付いて頭を抱えていた。
今回の議論は滞りなく速やかに済んだ。刑の執行に反対はしなかった。
いや、したくてもそれが意味のない事だと十分理解出来たから。
ああ、でもそれがどれだけの愚行だとしても私は反対の意を唱えるべきだったのか。
再考してみても確かな答えは見つからない。