月下の踊り子
「羽鳥、いるか」
突然の侵入者に驚く。
侵入者は私の顔を心配そうに伺っている。
「山口か」
「聞いたよ。舞歌ちゃんの刑の執行日が決まったんだってな」
「ああ、そうだ」
「そうだってお前、何も思わないのか」
無言で山口を睨みつける。
何も思わない?そんな訳ないだろう。
私がどれだけ舞歌の為にしてやれる事を考えているか。お前に分かるのか。
無言でその意を伝える。
山口は気まずそうに顔を俯かせた。
「そう、だよな。悪かった」
「いや、気にするな。お前が悪い訳じゃないんだ」
「あのさ、俺に出来る事があるんだったら何でも言ってくれよ。力になる。俺も最後まで舞歌ちゃんには笑っていて欲しいんだ」