月下の踊り子
私は考えた。
力になる。それはどの程度までなら力になってくれるのだろう。
例えば今、ここで舞歌を脱走させる計画を話したら山口は協力してくれるだろうか。
疑問を打ち消す。
協力者が増えればうまくいく可能性も増えてくるがそんな危険な橋を渡らせる訳にはいかない。
あくまで計画者も実行者も一人だけ。
その考えを曲げるわけには行かない。
「そろそろ仕事に戻る。お前も油を売ってないでさっさと持ち場に戻れ」
そう言って山口の前を通過して会議室を出た。