『仰せのままに、お嬢様』《完》
「すみません。
ありがとうございます」


女の人はペコッと頭を下げて、
ベビーカーを動かした。
あたしの方に、後ろの
ハンドルが来る。


どうかな? と思って
見てたら、赤ちゃんは
ママの顔が見えるように
なって安心したのか、
泣き止んだ。


「……よかったですね」


「ありがとうございます。
助かりました」


「いえいえ」


うまくいってよかった。

嬉しい気持ちで正面を
向いたあたしは――…。


(――ち、近っっ!!)


ほぼ目の前――何これって
いうくらいの至近距離に
楓さんの横顔を見つけて、
軽く硬直する。


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