『仰せのままに、お嬢様』《完》
「……わかったよ。今日の
ところは帰る。

リリカちゃん、またな」


「……………」


返す言葉が思いつかない。

無言でペコッと会釈だけ
すると、遼人さんはクシャッと
顔を歪めてベンツに乗り込み、
すぐに発進させて、その場を
立ち去った。


ベンツの姿が見えなくなると、
楓さんが静かにあたしの
そばに歩み寄る。

そして、深々と頭を下げて、


「申し訳ございません、
リリカ様。
このような場所で、リリカ
様を困らせる事態に……。

私の不行き届きでございます」


「え? な、何言ってるの。
楓のせいなんかじゃないよ」


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