『仰せのままに、お嬢様』《完》
家で出されるものといえば、
今日みたいに上品な西洋菓子
ばっかりだったから。

初めて見たあったかそうな
今川焼きはカルチャー
ショックで、どうしても
我慢できなかったんだ。


「奥様にこっぴどく怒られて、
泣いてたよね~」


「もう幹生君、今さら
そんなの思い出さないでよー!

小学生の時の話じゃない」


恥ずかしくてむくれた声を
あげた時、今度は反対側
からフッとかすかな笑い声。

見ると、楓さんがカップを
持ったまま、あたしを見て
微笑んでた。


「……楓まで笑わないでよぉ」


「――失礼いたしました。

ですが、私はリリカ様の
“おいた”を笑ったわけ
ではございません」


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