『仰せのままに、お嬢様』《完》
「……余計に気分が
悪くなりますか?」


真上から覗き込むように
楓さんが聞いてきた。
ちょっとだけ心配そう。


あたしの男嫌いを
指してるんだと気づいて、


「そういうわけじゃない
けど……」


そう答えたら、安心した
ような穏やかな笑みが
降ってきた。

――心臓が、バクバクする。


「ではこのままで。

お利口にしていて下さい、
リリカ様」


(お利口って――あたし、
子供じゃないよ……)


とはいえそれ以上抵抗する
気力をそがれて、結局
あたしはおとなしく部屋
まで運ばれてしまった。


部屋に着くと、楓さんは
あたしの体をそっとベッドに
寝かせてくれる。


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