『仰せのままに、お嬢様』《完》
「助けたとは申せません。

リリカ様が怖い目に
逢われるのを、防ぐことが
できませんでした」


「え? でもそれは、
あたしが電話しなかった
のがいけないんだから。

楓、すごい速さで校門まで
来てくれたでしょ。
あの時あたし、すごく
ホッとした……」


楓さんが来てくれたから
もう大丈夫だ、って。

なんか、何の疑いもなく
そう思ってた気がする。


「さようでございますか――」


楓さんは呟くように言って、
音もなくベッドサイドに
片膝をついた。

ちょうどあたしの手がある
辺りの位置。


楓さんの頭の位置が下がった
ことで、抱っこされてた時と
ほぼ同じくらい距離が近く
なって、またあたしの鼓動は
速度を増す。


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