『仰せのままに、お嬢様』《完》
しかも近づいた楓さんの
顔は、眉がスッとひそめられ、
どこか苦しそうで――…。


「――私は、心臓が止まる
かと思いました。

角を曲がるとすぐ、リリカ
様が不審な何者かと接触
していらっしゃることに
気づき――

初めて、運転中の速度違反を
犯してしまいました」


「速度違反……」


そう言えば、前に楓さん
言ってた。

主の安全を守るため、運転は
交通ルール厳守が鉄則。
そしてそれは、主が乗って
ない時でも変わらないんだって。


「恐らく、私にとって
初めての職務違反でございます」


フフッと苦笑いする表情に、
キュンと胸が締めつけ
られてしまう。


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