『仰せのままに、お嬢様』《完》
あたしってダメだな。

本当に――そこまで心配
してくれた楓さんに、今も
また心配かけちゃって。


「ゴメンね。

心配かけて、職務違反も
させちゃって。

あたしのせいなんだもん、
楓は少しも悪くないよ」


「いえ。それはもう
構わないのでございます。

あの瞬間に、そのような
ことは全く頭から消えて
おりました」


静かに言葉を紡ぎながら、
楓さんはそっと両手をあげた。

何をするのかと思ったら、
布団の端からスッと手を
滑り込ませ――そして、
布団の中であたしの右手をとる。

あたしの掌は、暖かい
楓さんの両掌に包まれてた。


_
< 225 / 364 >

この作品をシェア

pagetop