『仰せのままに、お嬢様』《完》
「ただ、それほど肝を
冷やしたということを
お伝えしたかったので
ございます。

正直なところ、もう二度と
あのような思いは御免
被りたい心境ですので」


「楓―――…」


しっとりと、楓さんの掌に
力がこもる。


あたしは恥ずかしいし、
ドキドキしてた。でもその
掌を振りほどこうとは、
不思議と全く思わなかった。


「もしまた本日のような
ことがあれば――次は真っ先に
私にご連絡下さることを、
お約束して頂けますね?」


ジッとあたしの目を見て、
真剣な顔で楓さんが尋ねる。


あたしは深く、コクリと頷いた。


「うん。約束する。

もう心配はかけないから」


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