『仰せのままに、お嬢様』《完》
そこで一旦、言葉を切って。

そして次のセリフは、どこか
遠くを見るような瞳で、
静かに紡がれる。


「それは、私自身の
誓いでもあるのです。

執事としての域を越えた、
私という人間としての」


「執事の域を越えた――
人間としての――…?」


どういうことなんだろう。
よくわからない。


だけど何だかすごく、
その意味を知りたい。


「それはどういう意味?」


問いかけると、楓さんは
ほんの少しだけ困ったような
微笑を見せた。

そして優しくあたしの掌を
撫でながら、


「お休みになられなくて
よろしいのですか?

私の話は、恐らく少々長い
昔話になってしまいます」


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