『仰せのままに、お嬢様』《完》
「……日常生活のお世話を
することは、特に難しい
ことではございませんでした。

食卓でお食事をされるのは
若夫婦のみで、大旦那様は
床に、坊ちゃまはお部屋に
お運び致します。

大旦那様には医師の資格を
持つヘルパーがついており
ましたので、私が大旦那様や
坊ちゃまと顔を合わせるのは、
一日のほんのわずかな
時間だけでした。

若夫婦は事業の再起や
坊ちゃまの将来を案じ、
日々お忙しく方々に
お出かけで……」


「そっか………」


聞いてるだけでも胸の
痛くなるような話だ。

あたしは無意識のうちに、
布団の上に出した両手を
キュッと握りしめていた。


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