『仰せのままに、お嬢様』《完》
するとそれを見てとったのか、
楓さんは暗くなった空気を
払うように少しだけ頬を緩めて、


「ですが、半年ほど過ぎた
頃から、徐々にそのような
生活にも変化が出てまいり
ました。

当初は頑なに心を閉ざして
おられたお坊ちゃまが、
少しずつ私に打ち解けて
きて下さったのです」


「え――そうなの?」


「はい。自室でしかお食事
なさらなかったのが、私と
一緒に使用人室で食事を
したいとおっしゃり――

私を自室に招き入れて少し
ばかりの会話をしたり、
絵を見せて下さるように
なりました」


「すごい! 楓がその子の
心を開いたのね!」


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