『仰せのままに、お嬢様』《完》
感激のあまり大きな声で
叫ぶと、楓さんは微妙な
笑みを見せ、首を横に振る。


「心を開いた、とまでは
申せないかもしれません。

ですが、少しずつ打ち解けて
下さっていたのは確かです。

私も坊ちゃまのことは常に
案じておりましたので、
私が仕えることで坊ちゃまの
心が健やかになれば、これ
ほど嬉しいことはございません。

今まで以上にお支えしたいと、
心より願っておりました」


そこまで話した後、楓さんの
表情がフッと曇った。

何か、辛い感情が
思い起こされたような顔。


きっとそのことがあった
から、楓さんは今、ここに
いるんだろう。


あたしはゴクリと息を飲んで、
楓さんの言葉を待つ。


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