『仰せのままに、お嬢様』《完》
「――ある日、坊ちゃまの
回復に見込みがあると
思われた若夫婦は、さる
高名なカウンセラーの元に
ご家族で赴く予定を
おたてになりました。

今までそのようなことは
初めてで、坊ちゃまは不安を
感じておられましたが、
私が同行するならいいと
申されたのです」


静かに語り続ける声。

だけどその声が、時々
ほんの少しだけ震えてる
ような気がした。

あたしの気のせいかも
しれないけど……。


「………それで?」


「同行したいのは山々でしたが、
若夫婦はそこまでする必要は
ないとおっしゃいました。

それに大旦那様がお残りの
以上、家を空けることも
できず――」


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