『仰せのままに、お嬢様』《完》
「ううん。それはいいの。

だってあたしが聞きたい
って言ったんだもん」


それに、謝るのはあたしの方だ。

こんな悲しい記憶、楓さん
だってきっと思い出したく
ないはずなのに。


その思いを伝えて謝ると、
楓さんは『いいえ』と首を
横に振る。


「それを気になさる必要は
ございません。

私も、自分がお話したいと
思ったから、お話しているの
ですから」


「楓……でも………」


「――本当でございますよ。

主を失った直後は、私も
悲しみに暮れ――そして
何より、後悔いたしました。

あの時坊ちゃまに同行
しなかったこと。坊ちゃまを
お救いできなかったこと。

一族を、最後まで
支えられなかったこと……」


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