『仰せのままに、お嬢様』《完》
「楓……それって……」


「――ええ。その言葉に
どうしても、坊ちゃまと
新しく主となる少女が
重なりました。

もしかしたらこれは、天に
召された坊ちゃまが下さった
幸運なのかもしれないと。

お二人が全くの別人で
あることは承知しています。

それでも、ここで悲しみに
暮れていては何も変わらない。

新しく私を必要として下さる
方に誠心誠意お仕えする
ことが、少なからず償いに
なるのかもしれないと。

そんなふうに、思えてきて――」


「楓―――…」



だから楓さんは、
ここに来てくれた。


執事を辞めようとまで
思ってた悲しみを乗り
越えて、あたしの執事に
なってくれたんだ。


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