『仰せのままに、お嬢様』《完》
と、温室のドアを開けて
入ってくる楓が目に入った。


相変わらず艶のある漆黒の
燕尾服と、サラサラの栗色の
髪が眩しいくらい決まってる。


あれ――でも、どうして
楓がここに?


「どうしたの? 何かあった?」


呼びかけると、楓はスッと
その形のいい眉をひそめ
ながら近づいてきて、


「どうしたの、ではござい
ません。

お時間になってもおいでに
ならないので、お探し
申し上げたのでございます。

14時からは会話術のレッスンを
行う予定でしたのをお忘れ
ですか?」


「え? 覚えてるけど……」


おかしいな。まだ時間は
あったと思うのに――…。


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