『仰せのままに、お嬢様』《完》
     ☆☆☆☆☆


けっこう長い時間二人で
別室に消えた後、リビングに
顔を出したのは楓だけだった。


「遼人さんは?」


心配もあって勢い込んで
尋ねると、楓は穏やかな笑顔で、


「所用を思い出されたそうで、
先程急ぎお帰りになりました」


「所用? 帰った?」


――何だかちょっと
信じられない。

思いっきりあたしを誘う
気で来てたのに、そんな
ことってある……?


「楓……遼人さんと何を
話してたの?」


教えてくれないような気は
してたけど、ダメもとで
聞いてみた。でもやっぱり
返ってきた答えは、


「縁談についてのお考え
などをお聞きしていた
だけでございます。

リリカ様がお気になさる
必要はございません」


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