『仰せのままに、お嬢様』《完》
というか、疲弊しきった
ように地面に両手をついて、
ハァハァと荒い息をしている。


黒ずくめの長身にサングラス、
赤茶けた短い髪。
――間違いない、やっぱり
この間の不審者だ。

男の人――だよね――…?


「おいこら、お前! 
お前は誰なんだ!

お前が楓さんを
連れ去ったのか!?」


幹生君が子供の劇のヒーロー
みたいにどこか間延びした
声で言って、その人のかけてる
サングラスをバッと奪った。


途端、思わずギョッとなる
あたし達。


「が、外人さんっ?」


素っ頓狂な声をあげてしまう。

だってまさか、外国人だとは
思ってなかったから。


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