『仰せのままに、お嬢様』《完》
「あなた、名桜大学の前で
あたしに声をかけましたよね?

あたしを見張ってたんですか?

そして、あたしの執事の
居場所を知ってるんじゃ
ないんですか!?」


男の人の日本語理解力は
やっぱり完璧だ。

“執事の居場所”と聞いた
瞬間にピクッと眉が動いたのを、
あたしは見逃さなかった。


「やっぱり知ってるのね!?

あ、あなたが拉致したのっ!?

楓はどこにいるのよっ!?」


自分でも信じられないような
剣幕で、男の人の肩を掴む。


地面に座ったままガクガク
揺すられて、男の人は目を
白黒させながら、


「ら、拉致だなんて
とんでもないっ。

事故だったんだっ。意識が
戻ったら、すぐにでも
帰そうと――」


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