『仰せのままに、お嬢様』《完》
(楓……意地悪だ……!)


あたしは一気に脱力して、
クテンと楓の胸におでこを
くっつけた。


楓は、あたしの背中を
優しく撫でながら、


「先日申し上げました。
これが、私の二つ目の
職務違反でございます。

生涯独身で主にお仕えする
ことを美徳とする執事が、
その主に恋をしてしまうなど。

本当は、もはや私は寿家の
執事失格な身でござい
ますが……」


そこで一度途切れる楓の言葉。

『失格』という言葉に不安に
なって顔をあげたけれど、
視線のあった楓は、どこか
照れたように微笑んでいた。


「リリカ様が私を意識して
いらっしゃることに気づき。

思わず、執事の職を犠牲に
してでも、そのお気持ちを
知りたいと考えてしまいました」


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