『仰せのままに、お嬢様』《完》
吸い込まれそう、と思って
いたら、唇に温かいものが
触れた。


温かくて、ちょっぴり
柔らかい。
――もしかして、楓の唇?


「……申し訳ございません。

少々、自分に抑えがききません」


楓が自分の口元に掌を当てて
気恥ずかしそうに言うもん
だから、一気にこっちも
ボンッとなる。


「そんなこと言わないでよ。

あたしの……初、なのに」


ファーストキス。


まさか10代で失う日が来る
とは思ってなかったけど、
相手が楓でよかった。

こんなに好きになれた、
大好きな人で。


「――さようでございますね。
失礼いたしました」


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