『仰せのままに、お嬢様』《完》
気を取り直したように言って、
楓は腕を緩めた。

そして今度はその手をあたしの
肩に起き、改まった様子で
ジッとこちらを見下ろす。


「あなた様の純粋でお優しい
心に触れ、私は愚かな恋する
男となってしまいました。

本来なら執事は失格で
ございます。ですがこれからも、
あなた様にお仕えし、共に
過ごすことをお許し頂け
ますか?」


「楓―――…」


バカだな、楓。


そんなの、確かめるまでも
ないのに。


「もちろんだよ。

これからもずっと、側にいて。
一番近くで、あたしを
見ててほしいの」


これは命令じゃなくて、
あたしのお願い。


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