優等生が惚れた女
移動教室でこんなにも冷や汗をかいたことはない。
皆があたしを見る鋭い視線
時には泣き出す人まで現れる。
本当にやめてほしい。
なんであたしが片瀬君と…
教室に着くと、ドアの向こうから賑やかな声がした。
「片瀬君!!歩多羽さんと付き合ってるの?」
「……は?」
声だけしか聞こえない状態だけれど
胸が無性にドキドキする。
「どうなんだよ片瀬。」
この声はきっと…中井君。
あの人は誰の味方なのか分からない。
長い沈黙が続く。
そわそわしながら次の言葉を待っていたら、ある1つの声がした。
「俺と歩多羽は友達だけど。そんな色恋みたいな関係じゃない。」
友達…。
隣にいた夕陽と顔を合わせる。
「片瀬が言ったなら、皆信用するでしょ。」
「そうだといいなぁ…。」
この一言のおかげで、たった数時間の誤解を解く事ができた。