優等生が惚れた女



一瞬に過ぎない片瀬君の行動だったけれど、あたしは見逃さなかった。


あたしを馬鹿にしたように笑ったけれど、常日頃から不機嫌全開で、眉をしかめている片瀬君の顔とはかけ離れた印象。



あたしはそのまま両手を合わせたまま、片瀬君の笑顔の余韻に浸っていた。



「…で嫌いなタイプの女は??」


女の子が繰り返される。
あまりにも直球すぎる質問は「私、片瀬君好きです。」と言っているようなもの。


あたしには真似できない行動。


片瀬君が質問した女の子を見て、ゆっくりと口を開いた。


「好きなタイプいますか??って聞いてどうなるわけ??俺は1人になりたい時に何度も俺に近づいてくる女が嫌い。」



……片瀬君の言動に、クラス中の誰もが黙り込む。

威圧的な空気が流れている。


ど、毒舌!!



近くで聞いた女の子達は後ろへ引き下がるように片瀬君から遠ざかっていく。


「相変わらず、冷たいねぇ。」


あたしの隣で呟く人。

誰だろうと横を向いてみると、あたしの親友の「夕陽」がいた。



「ってかあんた何そのポーズ??」


夕陽があたしの両手を合わせた状態のまま真似をする。


ずっとこのままだった。


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