放課後は、秘密の時間…
夕日も沈んで外が薄暗くなった頃には、あたしの涙も完全に止まっていた。


気がつくと、あたしは市川君の腕の中に収まっていて。

それを意識した瞬間、急に心臓が激しく動き出した。


「……いっ、市川君っ……」

「ん?」

「も、大丈夫だからっ……」

「そっか」


パッと離れたあたしを見て、彼がくすくす笑う。


「少しは落ち着いた?」


コクリと頷くと、市川君は手を伸ばして、あたしの頬にまだ残っている涙の跡を拭った。

彼が触れたところだけ、熱を持ってるみたいに熱い。


顔が赤くなってるような気がして……

俯くと、それを嫌がってるように思ったのか、市川君はすぐに手を離した。


「ごめん」

「あ……ちが、」

「俺も、あいつと一緒だ」

「……え……?」


呟いた声は弱々しくて、なんだか彼らしくない。

戸惑いながら顔を上げたあたしに、市川君はまるで痛みをこらえているような表情で、口を開いた。


「俺もあいつと同じこと、先生にしようとした。力づくで、無理やり」


その言葉に、ついこの間のことが鮮明に浮かんでくる。


「今考えると……本当、最低なことしたって思ってる」

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