放課後は、秘密の時間…
いつもどこか自信に溢れてる市川君が、こんな風に謝ったりするなんて、なんだか信じられなくて。

あたしは何も言えずに、ただ見つめることしかできない。


「ずっと、すげぇ後悔してた。俺、何であんなことしたんだろうって」

「………」

「先生が今日泣いてんの見てさ。やっぱ、ひどいことしたんだって改めて思ったよ」

「市川君……」

「本当、ごめん」


あの日、美術室に残されていた一枚のメモ。

市川君はどんな気持ちで、あれに『ごめん』って書いたんだろう?


きっとたいした意味なんかないって、あのとき、あたしは思った。

でも、それは……間違いだったのかもしれない。


本当は……

本当はすごく、後悔した気持ちがつまってた?


だから、急にあたしに触れてこなくなったの?


美術室に二人きりでも、そういうこと、全然しなかったのは――

ずっと、気にしてたから……?


「も、いいよ……こうして謝ってくれたし」

「でも、」

「いいの。今日、助けてくれたでしょ?それで許してあげるから」

「先生……」

「……ね?」


微笑んでみせると、市川君はため息をついた。


「ほんと……先生には敵わねぇや」

< 113 / 344 >

この作品をシェア

pagetop