放課後は、秘密の時間…
「せっかく許してもらったのにさ、同じこと繰り返して嫌われたくねぇから」


嫌いになんか、ならないよ……

なれるはずない。


市川君は、もう、こんなにあたしの中にいるのに。


「だから先生、早く俺のこと好きになって」

「市川君……」

「我慢できるのも、多分そう長くないからさ」


冗談めかして言った市川君の笑顔を見たとき、あたしは、確かに胸が高鳴るのを感じていた。



――市川君が、好き……


ダークブラウンの髪も、イジワルなことをささやく低い声も、甘い香りも。

全部が、あたしの胸を苦しくさせる。


気づかないうちに募っていった想いは、こんなに大きくなってしまった。

もう、ごまかせないほどに。


でも……

この気持ちを、市川君に伝えることはできない。


あたしは先生で、市川君は生徒。

こんなの許されるはずない。


それに、大切な恋人を裏切れない。

大也を傷つけたくないから……


この想いは、あたしの胸に閉じ込めておかなきゃいけない。


たとえこの先、どんなことがあっても――……

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