放課後は、秘密の時間…
なんで、こんな話しちゃったんだろう……


市川君が無理して笑ってるような気がして、あたしの胸は後悔でいっぱいになった。


「先生、そんな顔しないで」

「……ごめんね、辛いこと聞いちゃって」

「全然。で、父さんが仕事で転勤することなって、俺はここに残ったんだ。それで今は一人暮らしってわけ」

「……そうなんだ」


一人暮らしって、結構大変なのに……

市川君、大丈夫なのかな?


ご飯もちゃんと食べてないみたいだし……


「弁当うまかった。ご馳走様」


キレイに空になったお弁当箱を置いて、市川君はにっこり笑った。


「また作って、先生」


こんな話されたあとに、断ることなんかできないよ。


でも、これ以上市川君のそばにいたら……

あたしきっと、戻れなくなっちゃう。


戻れなくなるってわかってるのに、気持ちが止められない。

約束なんか、するべきじゃないのに……


「……じゃ、今度また作ってくるね。市川君の分も一緒に」

「マジで?楽しみにしてる」


この笑顔に、あたしは弱いんだ。


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